John Maynard Keynes|歴史上の人物|1883年6月5日生まれ
ジョン・メイナード・ケインズは、20世紀を代表するイギリスの経済学者である。1883年に生まれ、不況下での政府介入の有効性を説いたことで経済学に革命をもたらした。第一次世界大戦後の賠償問題を批判した『平和の経済的帰結』や、マクロ経済学の基礎を築いた『雇用・利子および貨幣の一般理論』はあまりにも有名である。現代社会の財政・金融政策のあり方に、今なお決定的な影響を与え続けている人物だ。
1883年、イングランドのケンブリッジに生まれたジョン・メイナード・ケインズは、知的財産に恵まれた環境で育った。彼の知性と鋭い直観が最初に世界を震撼させたのは、1919年、彼が36歳の時である。第一次世界大戦の講和会議に大蔵省代表として出席したケインズは、敗戦国ドイツに対して課される苛烈な賠償金が、将来的に欧州全体の経済を破綻させ、さらなる復讐心を生むと確信した。彼は抗議のために官職を辞し、その怒りと予測を『平和の経済的帰結』として出版した。この著作はベストセラーとなり、彼の名は「不吉な予言者」として世界に知れ渡ることになる。事実、その後の歴史は彼の懸念通り、ハイパーインフレとナチズムの台頭という破局的な道を辿ることとなった。
1930年代、世界恐慌が吹き荒れる中、既存の古典派経済学は無力であった。「市場の自浄作用に任せれば、いずれ完全雇用が達成される」という理論とは裏腹に、失業者は溢れ、経済は底なしの停滞を続けていた。この状況を打開すべく、ケインズが1936年に発表したのが、不朽の名著『雇用・利子および貨幣の一般理論』である。当時53歳だった彼は、この中で「有効需要」という概念を提唱した。需要がなければ供給も生まれない。ゆえに、民間の投資や消費が減退している時には、政府が積極的に財政出動を行い、需要を創出すべきであると説いたのである。この考えは「ケインズ革命」と呼ばれ、経済学のあり方を根底から覆した。
彼の理論は、第二次世界大戦後の資本主義諸国の黄金時代を支える大黒柱となった。ケインズは単なる数式の探求者ではなく、芸術を愛し、現実の社会問題に心を痛めるモラリストでもあった。経済は人の幸福のためにあるべきだという彼の信念は、複雑化する現代のグローバル経済においても、危機のたびに立ち返るべき指針として輝き続けている。国家が市場に介入し、不況を克服しようとする現代の政策の源流には、常にこの偉大なる学者の影があるのだ。