Koji Yakusho|アーティスト・作家|1956年生まれ
国内外の映画祭で高く評価され、日本を代表する映画俳優の一人とされる名優。
1956年、長崎県諫早市に男5人兄弟の末っ子として生まれる。本名は橋本広司。高校卒業後に上京し、東京都千代田区役所の土木工事課に勤務していた。友人に連れられて観た仲代達矢主演の舞台『どん底』に感銘を受けて俳優を志し、200倍の難関だった仲代主宰の俳優養成所・無名塾の試験に合格する。無名塾は2期生で、1982年に結婚した妻は無名塾の元女優である。芸名は前職が役所勤めだったことに加え、役どころが広くなるよう祈念して仲代が命名した。演技未経験だったため挨拶から指導を受けたという。1979年にテレビデビューし、当初は仲代達矢の付き人兼端役という立場からの出発だった。
1983年の大河ドラマ『徳川家康』の織田信長役で注目を集め、翌年の『宮本武蔵』で初主演に抜擢される。伊丹十三監督の『タンポポ』などに出演し、1988年に映画初主演を果たした。1996年の主演映画『Shall we ダンス?』が大ヒットし、同年の『シャブ極道』『眠る男』での演技も絶賛されて主演男優賞を総ざらい。1997年には『失楽園』が大ヒットし、今村昌平監督の『うなぎ』がカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞、自身も黒沢清監督の『CURE』で東京国際映画祭の男優賞を受賞する。青山真治監督の『EUREKA』もカンヌで批評家連盟賞を受けるなど、1996年から7年連続で日本アカデミー賞の優秀主演男優賞に選ばれ、名実ともに日本を代表する映画俳優となった。
2005年には『SAYURI』でハリウッドデビューを果たし、同作はアカデミー賞で3部門を受賞。翌年のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作『バベル』ではブラッド・ピットと共演した。2023年、ヴィム・ヴェンダース監督の日独合作映画『PERFECT DAYS』で主演と製作総指揮を務め、第76回カンヌ国際映画祭で日本人として19年ぶりとなる男優賞を受賞。作品はアカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされた。国内外の映画祭でその名が挙げられないことはないほどの評価を確立し、日本映画界を代表する存在であり続けている。
民放の時代劇でも高く評価され、1984年の『宮本武蔵』で初主演を果たして以降、時代劇から現代劇まで役柄を選ばない演技で知られてきた。『KAMIKAZE TAXI』『Shall we ダンス?』『失楽園』『うなぎ』と、1990年代には出演作が国内外の映画賞を次々と受賞。黒沢清監督の『CURE』や青山真治監督の『EUREKA』など作家性の強い作品でも存在感を放った。無名塾での地道な鍛錬に始まるキャリアは、ひとりの区役所職員が日本を代表する映画俳優へと至る軌跡そのものである。妻は無名塾の元女優で、1982年に結婚している。長崎県諫早市出身で、その誠実な人柄も共演者から慕われている。